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野生サケ保護の意義

いま、日本の川に帰ってくるサケのほとんどは、実は川で卵を産むことができません。自然産卵よりも効率のよい「人工ふ化放流」がさかんに行われているからです。

自然産卵では、卵から稚魚までの間に、他の生き物に食べられるなどして、数が大きく減りますが、その期間を人が育てることで、ずっと多くのサケを残すことができます。

私たちにとっては、おいしいサケやイクラをたくさん食べることができるし、生き残る割合が増えるサケにとっても、よいことのように思えます。

自然産卵の一場面

自然産卵の一場面

しかし、人工ふ化は養殖とは違い、人が育てるのはサケの一生のごく一部分だけです。放流したあとのサケには、自然の中で生き残る能力、生まれた川に帰る知恵が必要です。

野生の生き物は、周りの環境が変わっても、その中でうまく生き残った者が子を残すことを繰り返していき、少しずつ新しい環境に合った性質を持つことができます。

しかし、人工ふ化のサケのように「全部」生き残らせようとすると、環境の変化にうまく対応できなくなるかもしれません。

このように考えると、これからは人の都合だけでなく、サケを野生の生き物としてきちんと認め、自然産卵できる場所をもっと増やしていく必要があるのではないでしょうか。

頭部を食べられたサケ

頭部を食べられたサケ

そのような川では、サケ以外の生物が産卵を終えたサケを利用することにより、本来の豊かな自然環境の保全も期待できます。

多くのサケが自然産卵するウヨロ川は、そんなサケと環境を守っていくためのヒントを私たちに与えてくれています。